このブログの物件ウォッチでは、「格安」「掘り出し物」「最高の立地」といった言葉を使っていません。100万円の空き家を紹介するときも、「安い理由」を書くようにしています。
これは書き手の好みではなく、不動産広告のルールに沿った書き方です。そしてこのルールを知っておくと、空き家を探す側にとっても、広告のどこを信じてよいかが分かるようになります。
この記事では、不動産広告で使えない言葉と、空き家の広告で本当に見るべきポイントを整理します。
不動産広告には業界のルールがある
不動産の広告には、景品表示法にもとづく「不動産の表示に関する公正競争規約」(表示規約)というルールがあります。運用しているのは全国の不動産公正取引協議会で、長野県の不動産会社もこのルールに従って広告を出しています。
表示規約では、広告に必ず書かなければならない事項(必要な表示事項)と、根拠なく使ってはいけない言葉(特定用語)が決められています。
根拠がなければ使えない言葉
表示規約の第18条では、次のような言葉を「特定用語」としています。
| 種類 | 例 |
|---|---|
| 欠けるところがないことを意味する言葉 | 完全、完ぺき、絶対、万全 |
| 他社より優れていることを意味する言葉 | 日本一、日本初、業界一、超、当社だけ、他に類を見ない、抜群 |
| 選び抜いたことを意味する言葉 | 特選、厳選 |
| 最上級を意味する言葉 | 最高、最高級、極、特級 |
| 著しく安いという印象を与える言葉 | 買得、掘出、土地値、格安、投売り、破格、特安、激安、バーゲンセール、安値 |
| 著しく人気が高いという印象を与える言葉 | 完売 |
これらは一切禁止というわけではありません。ただし、裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を持っていること、または根拠となる事実を広告の中に一緒に書くことが求められます。
たとえば「格安」と書くなら、その地域の同じような物件と比べて、どのくらい安いのかを示す必要があります。「なんとなく安い」で使ってよい言葉ではないのです。
空き家の広告でよく見かける「掘出物件」「土地値」「破格」も、この特定用語にあたります。
SNSの物件広告は、特に注意が必要
最近はInstagramなどのSNSで物件を探す人も増えました。ところが、首都圏不動産公正取引協議会が2026年3月に公表した調査では、SNSの不動産広告の多くでルールが守られていないことが分かっています。
- Instagramの物件広告436件を調べたところ、必要な表示事項をすべて書いていた広告は1件もなかった
- 取引態様(売主か仲介か)の表示がないものが86.5%、宅建業の免許番号の表示がないものが89.0%あった
- 売買物件153件のうち、価格の表示がないものが68件(44.4%)あった
- 「最強」「破格」「抜群」「最高」「格安」「希少」を使った広告1,771件を調べたところ、「コスパ最強」「アクセス抜群」のような組み合わせや、「#最強」のようなハッシュタグでの使用も多く見られた
SNSは物件の雰囲気をつかむには便利です。ただし、気になる物件を見つけたら、不動産会社のホームページやポータルサイトの正式な情報で、価格や条件を必ず確かめてください。
参考:首都圏不動産公正取引協議会「SNSを利用した不動産広告の実態調査」(2026年3月19日)
空き家の広告で、本当に見るべき7つの項目
広告の飾り言葉より、次の項目を先に見てください。田舎の空き家では、ここに書かれている事実が価格の理由になっていることが多いです。
1. 取引態様(売主か、仲介か)
不動産会社が自分で売っている「売主」物件か、持ち主と買い手の間に入る「仲介(媒介)」物件かで、仲介手数料の有無が変わります。売主物件の見方は、つつじが原の680万円別荘地の記事で具体的に書いています。
2. 価格と、価格に含まれないもの
広告の価格のほかに、仲介手数料、登記費用、固定資産税の精算金などがかかります。古い空き家では、残置物の片付けや修繕の費用も見込んでおく必要があります。
3. 地目と、農地が含まれていないか
田舎の物件では、敷地の一部が「田」「畑」になっていることがあります。農地を買うには農地法の許可や届出が必要で、誰でもすぐに買えるわけではありません。
4. 都市計画(市街化調整区域かどうか)
市街化調整区域では、原則として建物を新しく建てたり建て替えたりすることが制限されます。「今ある家を使う」のか「いずれ建て替える」のかで、物件の価値が大きく変わります。
5. 接道と再建築の可否
敷地が道路に2m以上接していないと、建て替えができない場合があります。「再建築不可」と書かれた物件は、その分安くなっています。
6. 水まわりの設備(上下水道・浄化槽・井戸)
下水道が通っていない地域では浄化槽を使います。浄化槽の状態や、使っていなかった期間の配管の傷みは、広告からは分かりません。
7. 建物の状態と「現況渡し」
古い空き家では「現況渡し」「契約不適合責任免責」とされていることが多くあります。引渡し後に不具合が見つかっても、売主に修理を求められないという意味です。
安い空き家には、安い理由がある
同じ集落でも、100万円の空き家と800万円の空き家が並んでいることがあります。価格の差には、建物の状態、道路の条件、除雪のしやすさ、残置物の量など、必ず理由があります。具体例は同じ集落で100万円と800万円。空き家の値段の正体を宅建士が解説するで紹介しています。
そして、冬の除雪の大変さや、隣家との距離、夜の静けさといったことは、どんなに正確な広告にも書かれていません。最後は現地で確かめるしかありません。
このブログの書き方について
このブログでは、次のことを決めて物件を紹介しています。
- 宅建士として現地を見た物件だけを取り上げる
- 良いところだけでなく、注意すべき点も書く
- 根拠のない飾り言葉は使わない。安い物件は「なぜ安いか」を書く
広告の言葉ではなく、事実で判断していただくためです。
ご相談はツチクラ住建へ
気になる物件の広告があれば、「この条件はどういう意味か」「この価格は妥当か」といったご質問だけでもかまいません。ツチクラ住建(長野県上水内郡飯綱町)の宅建士・土倉がお答えします。

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